「かるたの季節は本当は秋からなのよ」 初めて高校選手権を取材した時に、かるた協会の方にそう言われました。 2009年の夏は例年通り暑くて、近江神宮の境内に設置されていた茅の輪が異世界に吸い込まれそうな濃い影を石畳の上に落としていました。 そのころの高校選手権は団体戦出場校もすでに40校を超えていましたが、個人戦出場が400名ほど。2000名を超えている近年のボリュームとは違いますが、それでも「こんなにたくさんの高校生が集まるんだ」と会場の熱気を驚きながら見つめていました。 まだ連載は始まったばかり。「ちはやふる」をどれほど続けられるかわからない、そもそもたいして知られていないという状況での取材。 会場ではあらゆる部分で怒られました。 「そこでメモ取らないでください」「話しないで」「カメラで気が散る」「下の句の読みが始まったら動かないで」「携帯はバイブモードでも聞こえるから切って」「ていうか