儒教・仏教・道教 東アジアの思想空間 (講談社学術文庫) 作者:菊地 章太講談社Amazon 菊地章太『儒教・仏教・道教』*1から。 「祝い」と「呪い」を巡って。 ところでこの「祝」と「呪」、意味は正反対でも、文字はもともと兄弟分である。 祝の示偏は、いけにえを載せて神をまつる台であり、祭壇をかたどっている。旁の「兄」は、ひざまずいて器をさし出す形象とされる。『説文』のような昔の書物には、口を上に向けて申しあげることとしてあるが、現在の文字学では、たまわったものを受ける器と解されている。「兄」の上半分がその入れ物である(この説にも批判がある)。 誰から何をたまわるのかというと、それは天から天の意向をたまわるのである。 紀元前五世紀ごろの史料にすでにこの字がある。天からたまわったものを言葉で発するのが「祝」であり、それを文字に記すのが「史」と呼ばれる役人であった。後者は歴史家の遠い祖先である