ここで、初航海で乗船した船の主要メンバーを紹介しておこう。 説明しておくが、僕がマグロ船に乗った10年間で、10年ずっと 同じ船に乗り合わせた人は、一人もはいない。 マグロ漁船の人の入れ替わりは激しいのである。 船頭 船長(ふなおさ)で、船内では神的な存在であり、全権を持つ。 全船員の精神的支柱でもあり、船頭が船員に“なめられる”船等 僕が知る限り存在せず、もし“なめられる”ようなことがあれば その船の指揮系統は崩壊し、マグロ漁船として成り立たない。 大型のマグロ漁船は【船長】【漁労長】【航海士】等がいるが、僕の乗った船は59トン型の鉄鋼船だった。 そのクラスの船では、船頭が上記3役を兼務する。 僕の父親である。 機関長 機関部の長であり、地位的に言えば船のナンバー2である。 非常に寡黙な人で、無駄口はほとんど叩かないが、酒を飲んだ時だけ饒舌になる。 機関の専門的な知識のほかに、冷凍機とい