こんにちは! 対人コミュニケーションについて研究・教育をしている大学教員の今井達也です。 簡単に私の経歴を書きますと、青山学院大学で英語の教員免許を取った後、アメリカの大学院で対人コミュニケーションについて学び、博士号を取得。その後、某私立大学で対人コミュニケーションの授業を担当しながら、海外のジャーナルを中心に対人コミュニケーションについての論文を出版してきました。 (私の業績や教育活動などはこちらをご覧ください。Twitterはこちら。) 今回は、研究一般に関わるお話です。 みなさまは捕食学術誌、通称「ハゲタカジャーナル」という言葉をご存知でしょうか。 「ハゲタカジャーナル(predatory journal)」とは、著者が論文投稿料(APC=Article Processing Charge)を支払い、だれでも自由に論文を読むことができる、いわゆる「オープンアクセスジャーナル」のビジ
Profile─山田 祐樹 2008年,九州大学大学院人間環境学府 博士後期課程修了。博士(心理学)。日本学術振興会特別研究員(DC1),日本学術振興会特別研究員(PD),山口大学時間学研究所 助教(特命)などを経て2013年10月より現職。九州大学大学院人間環境学府行動システム専攻 准教授を兼担。専門は認知心理学。著書に『日常と非日常からみる こころと脳の科学』(共編著,コロナ社)など。 私たちは捕食学術誌をどう見ているのか 研究者が自身の研究成果を社会に伝える際の第一手段は論文である。そして現状,心理学界(ワールド)でおそらく最も重要視されているものは査読付き論文であろう。SNSでは,査読付き論文が学術誌に掲載されたことを喜ぶ報告が毎日のようになされている。今のところ,受賞,研究費の獲得,人事などにおける研究者としての評価には査読付き論文の本数や掲載誌のブランドとインパクトファクターが
オンライン出版やオープンアクセスは、学術誌、学術論文へのアクセスを飛躍的に向上させ、政策的にも注目されてきた。一方、「Predatory Journal」をはじめとした影の側面も浮き彫りとなった。「Predatory Journal」は、悪徳雑誌、粗悪学術誌やハゲタカジャーナルとも呼ばれ、掲載料収入を主とした自己の利益を優先し、査読やその過程が不十分であったり、誤解を招くインパクト指標(インパクトファクター風の指標や数値)を使って投稿を勧誘したりといった問題を孕(はら)んでいる。 本稿では、オープンアクセス型学術誌の興隆について最初に論じ、「Predatory Journal」問題について事例を交えて実態や動向を俯瞰する。あわせて、判断の基準となる観点について、Predatory Reports(Cabell's International社)を参照し、例示する。 これらの内容やそれを踏ま
CA1959 – CHORUSダッシュボード・サービスと千葉大学附属図書館での取り組み / 高橋 菜奈子, 千葉 明子 ハゲタカジャーナル問題 : 大学図書館員の視点から 北海道大学北キャンパス図書室:千葉浩之(ちばひろゆき) 1. 日本におけるハゲタカジャーナル問題の表面化 金儲けのみを目的とした粗悪学術誌、いわゆるハゲタカジャーナル(1)の問題は、国際的にはpredatory publishingとして以前より認知され、様々な議論や対応がなされてきた。国内でも既に栗山が主題的に論じている(2)が、2018年の一連の毎日新聞の報道によって広く知られるようになった(3)。とりわけ、過去15年弱の間に日本から5,000本超の論文がハゲタカジャーナルに掲載されたとの調査結果(4)は重く受け止められ、研究者に対して注意を呼びかける動きが見受けられる(5)。 筆者も2018年10月に研究者向けに注
Natureは、11月8日、"Scammers impersonate guest editors to get sham papers published"と題する記事を公開した。 本記事は、出版プロセスを悪用し、質の低い論文や意味の通らない論文を既存の査読ジャーナルに掲載する悪質行為および、Elsevier社などによるジャーナル記事の撤回を紹介したもの。 多くのジャーナルが特定のトピックに焦点を当てた特集号を発行している。そのような特集号では当該研究の専門家であるゲスト編集者が監修することが多いため、科学者を装った人物がゲスト編集者を申し出て、偽の論文で特集号を埋めるケースがあるという。Elsevier社は出版済みの165件の論文を撤回し、今後さらに論文300件を撤回するという。Springer Nature社も、同社の特集号に掲載された62件の論文を撤回した。専門家は、ほかの出版社も
2021年10月26日付で、Springer Nature社が刊行する学術雑誌Natureに、カナダ・モントリオール大学のKyle Siler氏らによるコメント記事”Predatory publishers’ latest scam: bootlegged and rebranded papers”が掲載されています。 このコメント記事では、Web of ScienceやScopusといった選択的な論文データベースで索引付されていない出版社のデータベースLacunaを構築したことによって明らかになったハゲタカ出版社の手口について述べられています。 Lacunaは、主要な論文データベースから省略された出版物を表にすることを目的としており、10の出版社の2,300のジャーナルに掲載されている90万を超える論文のインデックスを提供しています。これにより、学術コミュニケーション全体の正当性を調査し
Nature誌のオンライン版に、2021年3月23日付けで記事“The fight against fake-paper factories that churn out sham science”が掲載されています。偽の科学論文を注文に応じて製造する「論文工場」(paper mill)と、学術界・出版社等との戦いをめぐる近年の動向を紹介しています。 記事の冒頭では、英国王立化学会(RSC)の学術誌“RSC Advances”等に掲載された論文に「論文工場」による組織的な偽造の疑いが見つかり、2021年1月にRSCがこれら論文の撤回を表明したことを取り上げています。これらの論文が中国の病院に勤務する著者のものであったことや、中国の医師は論文発表が昇進要件に含まれることが多いものの、研究に割ける時間が限られていることに触れています。その上で、中国政府も論文偽造の問題への対処として研究評価の改
2020年9月8日付で、Elsevier社が刊行する大学図書館の関わるテーマを主に扱う査読誌“The Journal of Academic Librarianship”掲載記事として、米・テキサス工科大学の研究者5人による共著論文“A qualitative content analysis of watchlists vs safelists: How do they address the issue of predatory publishing?”がオープンアクセス(OA)で公開されています。 学術出版において、ハゲタカジャーナル・ハゲタカ出版に対する懸念はますます高まっています。この問題へ対抗するため、多くの個人・団体・企業がハゲタカ雑誌・出版社の特定を目的とした「警戒リスト(watchlist)」や、信頼のおける雑誌・出版社の特定を目的とした「安全リスト(safelist)」
【interview】 オープンアクセスの進展と査読のこれから 佐藤 翔氏(同志社大学免許資格課程センター准教授)に聞く 学術情報をインターネットから無料で入手でき,技術的・法的にできるだけ制約なくアクセスできるようにする「オープンアクセス(Open Access;OA)」が進展している。その一方で,適切な査読を行わずに不当に利益を得ようとするOA雑誌の存在が指摘されており,「ハゲタカジャーナル」として日本のメディアでも報道されるようになってきた。 論文投稿あるいは文献検索などの機会が多い医療者にとって,OAは身近な話題となりつつあるだろう。OAは今後どのような形で進展するのか。その際に生じる課題にどう対応すべきか。図書館情報学を専門とし,OAの問題に詳しい佐藤翔氏に聞いた。 OAメガジャーナルの興隆と停滞 ――学術論文のOA化の進展状況から教えてください。 佐藤 OA運動が成立した契
プレプリントサーバbioRxivに2020年3月11日付で、スイス国立科学財団(SNSF)の博士研究員であるAnna Severin氏ほか4人の共著論文“Who Reviews for Predatory Journals? A Study on Reviewer Characteristics”が掲載されています。 同論文は、ハゲタカジャーナルと信頼のおけるジャーナル(legitimate journals)それぞれについて査読者の傾向を観察すること、ハゲタカジャーナルに対する査読の地理的な分布状況を調査することを目的として執筆されました。ハゲタカジャーナル・信頼のおけるジャーナルの情報源として、Cabell’s International社のブラックリスト・ホワイトリストを使用し、査読登録サービスPublonsの情報と照合しながら、それぞれのジャーナルの査読者について、その査読や出版に
韓国のKISTI(韓国科学技術情報研究院)は、3月24日、「健全」な学会活動や論文出版を支援するサービス"SAFE"のβ版を公開した。 SAFEでは、質を保証できる学会誌リストに加え、疑わしい学会および対象学会が発行している学会誌のリストを公開。疑わしい学会・学会誌の概念と特徴、ガイドライン、関連動向などの情報、KISTIがこれまでに収集・分析した約15万件以上の疑わしい学会誌、48万件以上の疑わしい学術イベントのリストを公開しているという。 [ニュースソース] "부실학술출판 문제, 모든 연구자들이 함께 해결해야" ― KISTI 2020/03/24 (accessed 2020-03-25) [小欄関連記事] 2019年11月13日 韓国教育部、国内研究者に「低レベル」な国際学会への参加をやめるよう要求(記事紹介)
THEは、1月21日、"India to train researchers in how to spot predatory journals"と題する記事を公開した。 本記事は、インドのUGC(University Grants Commission、大学助成委員会)が公表した新たなガイドラインにおいて、博士課程の学生に研究と出版倫理に関する30時間のトレーニングコースの受講が義務化されたことを紹介。 そのトレーニングには、研究不正、研究公正、研究指標などのテーマに加え、ハゲタカジャーナルを判別するための講習も含まれていることなどを示している。その他に、同トレーニングの効果や同様のトレーニングを教職員や研究者にも導入すべきとする意見なども紹介している。 [ニュースソース] India to train researchers in how to spot predatory journ
TheScientistは、5月9日、"Academics Raise Concerns About Predatory Journals on PubMed"(試訳: PubMed上のハゲタカジャーナルについて、学術界が懸念を表明)と題する記事を公開した。 本記事は、一部の研究者などが、米国立医学図書館(National Library of Medicine、NLM)の引用や抄録のリポジトリであるPubMedにおけるハゲタカジャーナルの存在を指摘、懸念していることを紹介。 Beallのブラックリスト、DOAJ収載ジャーナルを基にしたホワイトリストなどを用いて検証した結果、疑わしいジャーナルがいくつかみつかったことや、ハゲタカジャーナルに関する研究でリストアップされた数誌がPubMedに収載されていたことなどを示している。 また、NLMが厳格な品質管理を講じているにもかかわらず完全にハゲ
2019年3月29日、米国ネバダ州連邦地方裁判所は、いわゆるハゲタカオープンアクセス雑誌の出版等を手掛けるOMICS Group社等と、その所有者であるSrinubabu Gedela氏に対し、5,010万ドルの支払いを命じる略式判決を下しました。訴訟の提起者である連邦取引委員会(FTC)等がプレスリリースを出しています。 FTCによる告訴は2016年に行われたもので、OMICS Group社、iMedPub社、Conference Series社およびそれらの所有者であるGedela氏を対象とするものです。Gedela氏の所有企業では多数の学術雑誌を刊行し、国際会議を開催していましたが、実際には査読が行われていない雑誌にもかかわらず査読が存在すると虚偽の記載をしたり、承諾を得られていない研究者の名前を編集委員や国際会議の発表者として掲載するなどしていました。また、投稿後に著者に対し高額の
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