よく、ドイツ語はローマ字読みにすればよいと言われるから、正書法は簡単であると思われるかもしれないが、前回も見たように必ずしもそうではない。ただ、英語、フランス語の正書法に比べれば確かにやさしいと言えよう。英語、フランス語には歴史的綴りが多く、極端な言い方をすれば、どの語をどう綴るのかは発音を知っていてもあまり役にたたず、個別に覚えていかなくてはならない。 この発音と綴りの間の対応関係が失われてしまっているという状況は漢字に似ていると言えよう。その限りにおいて、英語やフランス語の歴史的綴りは表意的、表語的であり、全体としてそれぞれの語の意味を表わしているである。 表意的な文字としては漢字の他に数字がある。1, 2, 3などの数字は、読み方、発音は言語によって異なるが、それぞれの数という意味を表しており、そのまま国際的に理解される。このように表意文字は個別言語の音声的な違いを乗り越えて、視覚的