本題に入る前に、まず海の所有権について歴史的な背景を振り返っておきたい。古代ローマでは、海はすべての者に開放される万民の共有物と考えられていたため、古代から中世前半にかけて海洋を航行することは自由であった。 しかし、中世後半になると、ベネチアやジェノバなどの都市国家が近海の領有を主張し、通交する外国船舶から通行料を徴収するようになった。 その後、大航海時代になると、ポルトガルとスペインがそれぞれの勢力が拡大した範囲の領有を主張し、1493年にはローマ法皇が、それを追認するような教書を発表した。 英国のエリザベス女王は1580年、世界で2番目に世界一周を果たしたキャプテン・ドレーク(フランシス・ドレーク)の太平洋航海に対するスペインの抗議を拒絶するとともに、1588年にはスペインの無敵艦隊を撃破し、名実ともに「海洋の自由」が確立された。 16~17世紀におけるオランダのグロチウスの「海洋自由