極めて暗く、不可解に感じることが多いこの不確かな時代、スティーブン・ピンカー(66)は「前向きな声」として突出してきた。これはピンカーにとって好都合なことだった。彼の著書である『暴力の人類史』(2011年)や『21世紀の啓蒙 : 理性、科学、ヒューマニズム、進歩』(2018年)はベストセラーとなり、ハーバード大学の認知心理学者である彼をアカデミックな世界を超えて、広く一般に知られる知識人にしたからだ。 だが一方で、彼の著書は、批判も少なからず生んだ。なかでも、ピンカーの世界観は、行きすぎた資本主義の肩を持ちすぎであり、また現在も多くの人が直面している深刻な苦難に対してあまりに冷たい、というのはよく聞かれる批判だ。 そんなピンカーの新著で、米国では9月28日に発売された『合理性:その本質・希少性・重要性に迫る』(未邦訳)はさらに物議を醸しそうな大きなテーマに取り組んでいる。 「人は非合理的な
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