はじめに蝶や蛾の翅の模様は多様に富み,特に枯葉や樹皮などへの擬態模様は多くの人々を魅了してきた(1)1) 海野和男:“自然のだまし絵 昆虫の擬態:進化が生んだ驚異の姿”,誠文堂新光社,2015..ダーウィン(Charles Robert Darwin)とウォレス(Alfred Russel Wallace)により始まる進化生物学において,生物のかたちや模様の多様性は進化による産物であると説明される.擬態は自然選択による進化を検証するための恰好の対象であり,その価値は現在でも変わらず重要である(2)2) 藤原晴彦:“だましのテクニックの進化—昆虫の擬態の不思議—”,オーム社,2015..擬態には,実にさまざまな戦略がある.代表的なものとして,背景に隠れる隠蔽擬態(crypsis),枯葉や枝などの自然物をそっくりまねる扮装擬態(masquerade),目立つ色や斑紋で注意を促す警告擬態(apo