絶えず行われてきた品種改良によって、かつての「米どころ」以外でもおいしいお米が収穫できるようになった(写真:アフロ) 地球温暖化によって農業に被害が出るという意見がある。たしかに一定の影響は出るであろうが、適応は十分に可能だ。農業とは本質的にテクノロジーの塊であり、品種改良などの技術を駆使して様々な気候に適応することこそが、その本領だからだ。事例とデータを紹介しながら前後編に分けて解説していこう。 (杉山大志:キヤノングローバル戦略研究所研究主幹) 地球温暖化を先取りしてきた東京 東京では過去100年間に約3℃の年平均気温の上昇があった。下のグラフは気象庁のデータによるもので、東京・大手町の気温である。以前の記事で紹介した吉祥寺(東京都武蔵野市)にある成蹊気象観測所のデータでも、ほぼ同じ気温上昇が観測されている。これは主に都市熱によるものだ。