1929年発表のE・H・ヴィシャックによる長篇小説『メドゥーサ』(安原和見訳 アトリエサード)は、ようやく邦訳が実現した幻の怪奇幻想小説です。作者は『アルクトゥールスへの旅』で知られるデイヴィッド・リンゼイの親友だったそうですが、リンゼイ作品に劣らない奇妙さで、聞きしに勝る怪作です。 幼くして両親を失ったウィリアム・ハーヴェル少年は、祖父母の家に預けられますが、恐れていた祖父の死、学校での同級生の死に自分が関わってしまったという意識から衝動的に家出をしてしまいます。 彷徨っている際に出会った男ハクスタブルは、自分が船主として参加する航海にウィリアムを誘い、一緒に航海に出ることになります。彼はかって海賊に人質に取られたという息子を探しだそうというのですが…。 基本のストーリーは、息子を探すハクスタブルの航海を描いた海洋冒険小説です。乗組員に「海賊」の一員オバディア・ムーンや不思議な容貌の男で