大竹 剛 日経ビジネス記者 2008年9月から2014年3月までロンドン支局特派員。2014年4月から東京に戻り、流通・サービス業を中心に取材中 この著者の記事を見る
「米国なら50万円でも数千人集まるのに日本ではタダにしても数百人ですよね」。 セミナーやカンファレンス、シンポジウムといった人が集まる催しの話である。本職は記者のはずだが催しを企画することもある。趣旨と題名の決定、プログラムの作成と講師依頼、催しの告知、当日の立ち会い、報告記事の執筆などやることは結構ある。数えたことはないもののかかわった催しの数は50回を超えているだろう。 企業や各種団体にも似た仕事を担当している方がおられる。本業を補完するためにセミナーを企画している人たちである。お会いすると必ずといっていいくらい冒頭の話になる。 例えば、IT(情報技術)関連のカンファレンスを開く場合、米国ではオーランドやラスベガスといった場所で1週間くらい開かれる。色々な値段があるものの数千ドルはする。 驚くのは冒頭の発言の通り、数千ドルを払ってやってくる参加者が数千人いることだ。失礼ながら日本で無名
B級ご当地グルメは2種類ある 前置きが長くなってしまったが、姫路でベスト10入りしたメニューの共通点とは何か。それは「10種類すべてが、昔から地元で愛されてきたメニューである」という点だ。 「ご当地」なんだから当たり前だろう、と思うのは早計だ。B級ご当地グルメは、実は2種類ある。 一つは前述したような、昔から食べられてきたものを街おこしのために活用した「発掘型」。もう一つが、街おこしを狙ってここ数年で新たに考案された「開発型」だ。今回姫路に出展した63団体のうち、開発型が20団体近くも参加している。第1回から出展している北海道富良野市の「富良野オムカレー」や、第2回から参加の岐阜県郡上市「奥美濃カレー」がその代表例。今年は開発型の入賞はなかったが、昨年の厚木大会では静岡県三島市「みしまコロッケ」が9位、北海道北見市の「オホーツク北見塩やきそば」が10位に入るなど健闘している団体もある。 B
大阪市長選が告示された11月13日の午後、私は大阪駅に降り立っていた。 大阪に特段の用事があったのではない。途中下車だ。その日の夕方、神戸を訪れる予定があって、往路の新幹線で駅弁を食べる姿が、なんだかわびしく思えたので、大阪で遅い昼食をとるプランを採用したのである。 大阪に立ち寄るのは、おそらく20年ぶりぐらいだ。 御堂筋の中心街を自分の足で歩く経験ということになると、さらに久しぶりだ。もしかして、大阪に赴任した新入社員の頃以来かもしれない。ということは、約32年ぶりということになる。その前は万博。41年前。タイム・スリップだ。 大阪は、すっかり様変わりしていた。薄汚れた印象のあったJRの大阪駅も見違えるようにきれいになって、駅前からの眺望は、一から十まで私の記憶と違っている。別世界に来たみたいだ。 その日は、2時間ほどかけて、主に梅田の近辺を歩きまわった。 曽根崎あたりで道に迷いながら、
「新興国に自ら営業しにきたと言いながら、その場で商談が進まない。日本企業は何のために役員をわざわざ派遣しているのか」 スマートシティの開発にかかわるシンガポール政府関係者は半ば呆れながら、こんな疑問を口にする。 その言葉の背景には、こんなエピソードがあった。 新興国の政府関係者が集まるパーティに日本企業の役員が参加。「スマートシティの事業を手がけています。ぜひよろしくお願いします」と挨拶してきた。日本の技術に興味津々の新興国側の出席者は「こんなスマートシティを作りたい。どんなプランが考えられるか」と質問を浴びせたが、その役員は「検討します」を繰り返すだけで、具体的な提案などは一切なし。やり取りは、ここで終わってしまった。 最近は、新興国における日本大使館主催のパーティに人が集まらないという。「日本人は挨拶と名刺交換は欠かさないが、その先がない」。これが、新興国の関係者が抱いている共通の感想
この新しい働き方に、国際コンサルタント大前研一氏も注目する。10月17日、サンフランシスコのコワーキング・スペース、「シチズン・スペース」(citizen Space)に大前氏が訪れ、パネル・ディスカッションが行われた。大前氏に加え、パネルにはシチズン・スペースCEO(最高経営責任者)のトビー・モーニング氏、コワーキング・コーチとして、施設にアドバイスを行うレインズ・コーヘン氏、サンフランシスコを拠点とするウェブコンサルティング会社CEOのブランドン・ヒル氏が参加した。現在のコワーキング・スペースの現状から、将来のトレンドまで新しい働き方を議論した。 誰にでもグーグルのオフィス環境を! シチズン・スペースは、2006年にサンフランシスコで開設されたコワーキング・スペースの先駆けとして知られている。現在ではサンフランシスコ、ニューヨーク、ロンドンなど大都市を中心に、コワーキング・スペースが6
CEO兼任からわずか2週間後に解任されたマイケル・ウッドフォード氏。オリンパスの外国人社長としてマスコミの注目を浴びた。だが、就任からわずか数カ月後に、過去の買収案件に「巨額損失がある」と追及して、会長など他の経営陣と対立を深めていった。彼が語る生々しいやりとり。そこに、解任劇の真相があった。「このまま問題を放置すれば、日本経済は悪化の一途をたどる」。 (聞き手は石黒 千賀子=日経ビジネス副編集長) 10月20日午前11時30分。英ロンドン中心街のホテルで、オリンパス前社長のマイケル・ウッドフォード氏の到着を待っていた。2日前、彼から「取材を受ける」というメールが届いた。電話で連絡を取ると、興奮した声でこうまくし立てた。 「身の危険を感じているから、とにかく詳しく話をして真実を世に広めたい。電話より会ってじっくり話したい」 そこで、飛行機に飛び乗って、ホテルの一室で待った。約束の時間から3
2009年からインターネットを活用した翻訳サービスを始めた同社は、欧州のベンチャーキャピタル(VC)であるアトミコや米エンジェルファンドの500スタートアップスから525万ドル(約4億円)の出資を受けたという。アトミコに対してプレゼンしたのは今年6月のこと。そして9月中旬には、出資金が入金された。3カ月半という短期間での決断から実行まで移したことに、ラングCEOは驚いた。 日本のVCにも出資を請うべく、何度も足を運んだ。説明のために長い時間を割いたが、結局、出資には至らなかった。ビジネスモデルの将来性に問題があったわけではない。それよりも、経営者が32歳と若く、しかも外国人という「特殊性」に対して、日本の投資家は「前例がない」と難色を示した。 アトミコは、インターネットを利用した電話ソフト「スカイプ」の共同創業者であるニクラス・ゼンストローム氏がトップを務めるVCだ。主に欧米のIT(情報技
熊野 信一郎 日経ビジネス記者 1998年日経BP社入社。日経ビジネス編集部に配属され製造業や流通業などを担当。2007年より日経ビジネス香港支局に異動、アジアや中国に関連する企画を手がける。2011年11月に東京の編集部に戻る。 この著者の記事を見る
東日本大震災から半年が経過しようとしている。 個人的には、3月11日からの半年間で、時代がすっかり変わってしまった感じを抱いている。 震災以前の出来事は、たった1年前に起きた事件であっても、遠い昔の記憶であるように感じられる。不思議な感覚だ。 震災を契機として、具体的に何が起こって、われわれの精神のどの部分がどんなふうに変化したのかについては、今後、長い時間をかけて、じっくりと検証しなければならないのだと思う。が、細かい点はともかく、わたくしども日本人の時代認識が、震災を機に変わってしまったことは確かだ。 一例をあげれば、「戦後」という言葉が死語になりつつある。 これまで、昭和が終わって元号が平成に変わっても、二十世紀が二十一世紀に移っても、「戦後」という時代区分は不動だった。で、その言葉は、つい半年前まで、国民の間に広く共有されていた。 それが、震災を経てみると、「戦後」は、にわかに後退
「増税」vs「反増税」は本当の対立軸でない 今回のコラムに「社会保障費の削減が政治的に主張されない理由」というタイトルをつけた。ただし、筆者は「年金・医療・介護といった社会保障を“大幅に削減”するのが望ましい」と考えているわけではない。 政治の世界では「増税」vs「反増税」という対立軸が話題になることが多い。だが、これは本当の対立軸ではない。歳出の約半分に及ぶ財政赤字や、公的債務(対GDP)がもはや200%に達しつつある日本の財政状況を踏まえれば、本当の対立軸は「増税」vs「歳出削減」である。 このため、政治が歳出削減を重視する場合、社会保障予算の削減から逃避することは許されない。現状の財政・社会保障は持続可能でない。特に、社会保障予算は毎年1兆円以上のスピードで膨張している。経済学に「ノー・フリーランチ(ただ飯はない)」という言葉がある。何らかの便益を受けている経済社会が、そのコストを支
8月24日に米アップルのCEO(最高経営責任者)を退任し、経営の第一線から退いたスティーブ・ジョブズ氏(56歳)──。 共同創業者でありながら一度は追われたアップルの経営に1996年に復帰。倒産寸前にまで追い詰められていた古巣を蘇らせ、デジタル携帯音楽プレーヤーの「iPod」、スマートフォン(高機能携帯電話)の「iPhone」、タブレット(多機能携帯端末)の「iPad」などのヒット商品を連発。時価総額で米マイクロソフトなどを抜き去って、8月上旬には米国企業で首位に立った。 「天才」「カリスマ」などの呼称をほしいままにした稀代の経営者の手腕やリーダーシップの特質について、米ハイテク企業の経営戦略研究の第一人者であるデビッド・ヨフィー米ハーバード大学経営大学院教授に聞いた。 (取材構成は、中野目純一=日経ビジネスオンライン記者) ── 一時は倒産寸前の状態にあったアップルは、スティーブ・ジョブ
池上彰さんの新連載、スタートです。池上さんが、さまざまな分野の学者・研究者を訪ねて、日本と世界が直面するさまざまな問題を、各界を代表するプロの「学問の目」でとらえなおす。いわば、大人の大学、それがこのシリーズです。 第1回でご登場いただくのは、東京大学で歴史学の教鞭をとる加藤陽子教授。加藤先生は、以前も日経ビジネスオンラインにご登場いただき、ベストセラーとなったご著書『それでも日本人は戦争を選んだ』をテキストに、なぜ日本人が負けるとわかっていた第二次世界大戦に突入したかを検証しました。 いま加藤先生にお話をおうかがいする理由。それは、東京電力福島第1原子力発電所の事故で明らかになったように、日本の原子力発電にまつわる行政、政治、企業、地域社会、そしてメディアの行動パターンがおそろしいほど、第二次世界大戦のときのそれとそっくりだったからです。 日本人はどうして同じ過ちを繰り返すのか? どうす
無視すべきだ。 常識的に考えれば当然そうなる。 論評してみたところで彼らが耳を傾ける道理は無いのだし、私が関わることでポジティブな変化が起こることも考えにくいからだ。獅子が全力を尽くすのはウサギまでだ。それ以下のサイズの生き物を追いかけることは、労力の無駄であるのみならず、百獣の王たる者の沽券に関わる。だから、獅子はネズミを追わない。君子もまたかくあるべきだ。その通り。賢い人間は炎上中の物件には近づかない。 なのに、なぜだろう、私はそれを無視することができない。 困った性分だ。 ここまでのところで、半分ぐらいの読者は、ピンと来ているはずだ。 「ああ、オダジマはまた2ちゃんねるのネタをいじくりまわすハラなのだな」 と。 「どっちにしても獅子ってガラじゃないし」 その通り。今回はフジテレビの「韓流推し」に対して、主にネット上で展開されている反発の動きについて書いてみようと思っている。 無視する
前回の記事「日本の若者がつくったバングラデシュ」では、ケータイはそれなりに普及してるが、メールやソーシャルメディアを一般大衆が使うようになるには、まだ時間が必要なバングラデシュの情況を紹介した。識字率の問題だ。適切な表現か迷うところだが、やはり「途上国」である1つの原因だろう。 一方、「途上国」ではなく「新興国」と呼ばれるようになったインドネシア。ジャカルタでは、近代的ビルと古い街並みが混沌と併存しており、その中を無数のクルマとバイクが駆け抜ける。人口2億3000万人を抱え、経済成長著しい国は、実は「フェイスブック大国」でもある。米国に次いで2番目にユーザー数が多い。2011年7月現在のデータでは4000万人近い数に上り、人口比でも20%近くに達している。因みに米国は人口比で約48%だ。 今年の初め、ソーシャルメディアの普及率の高さは、先進国特有の現象ではないことを、アフリカ北部から中東に
東日本大震災の被災地への失言問題で7月5日に辞任した松本龍・前復興大臣。14日になって、奇異な言動の一部は「疲労が重なった結果、気分障害による軽い躁状態が関係した可能性が高い」と医師団が発表したが、世間の信頼を取り戻すにはもう少し時間がかかりそうだ。 一方で、「辞任するならせめて環境大臣でいてほしかった」と惜しむ声も挙がっている。 「松本氏は国際的にも評判がよかった。辞任は日本の環境外交にとって残念だ」「丁寧な仕事ぶりだった。一度背負ったらどんな結末でも引き受け、言い訳しない人。惜しい」という声だ。松本氏は、昨年9月から今年6月まで環境大臣(防災大臣も兼任)を務め、環境の分野では市民やNGO(非政府組織)、自治体や企業などからも評価される大臣だった。 その最大の成果は、昨年10月に名古屋市で開かれたCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)の成功である。 COP10では、薬や食品の原料
イノベーションとは、必ずしも画期的な発明を指すわけではない。既にある技術やアイデアでも、その組み合わせ方次第で、世界を変えるようなイノベーションを起こせる──。累計20万部超を売り上げた『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』の著者、カーマイン・ガロ氏は言う。 今年6月、新著『スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション』を発表したガロ氏。今回のテーマはタイトルの通り、イノベーションである。一見、とらえにくいこの言葉の意味を、米アップルのスティーブ・ジョブズCEO(最高経営責任者)の言動を引用しながら、具体的に解説していく。ジョブズ氏を通じて学ぶ、イノベーションの本質とは。その言葉に、しばし耳を傾けていただきたい。 (構成=蛯谷 敏=日経ビジネス記者) 今年6月、前作から1年ぶりの新著を発表しました。テーマは、「イノベーション」です。まずは、私がなぜイノベーションをテーマにした本を書こうと思
九州電力によるいわゆる「やらせメール」問題は、発覚以来、拡大し続けているように見える。以下、これまでに報道されたところを、時系列に沿って列挙してみる。 ・6月26日:佐賀県のケーブルテレビ局が、運転停止中の玄海原発(2号機と3号機)の再稼働について理解を求める県民向けの説明番組(←経産省主催)を放送した。 ・7月2日:日本共産党の党機関紙「しんぶん赤旗」が、26日の放送で紹介された視聴者からのメールの中に、九電の関係者の働きかけによる「やらせメール」が含まれていた旨を報道。 ・7月4日:佐賀県議会原子力安全対策等特別委員会において、共産党の議員が「やらせメール」問題を追及。これに対し、参考人として呼ばれた九電の中村明・原子力発電本部副本部長は、「(社内や関係会社に)どうこうしろと言った事実はございません」と「やらせ」疑惑を否定した。 ・7月6日:九電の社内調査で、同社幹部が再開賛成の意見を
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