出勤時に通学路を歩いていると色々な世界が見えてくる。春を感じさせる花たちがそろそろ咲こうかという気配を見せる中、中学生女子の3人組が僕の前を歩いた。 「ねえねえ、進路希望、なんて書いた?」 「全然わかんないよ、お母さんに相談してみたけど自分で書けって」 「やだなあ、受験。来年の今頃はもう終わってるのかな」 「一年後ならまだ全然先じゃんね」 未来に対する切ないまでの揺れる心。角の一軒家の軒先の小さな花の蕾が風に吹かれて揺れているのが見えた。 僕の世界と彼女たちの世界は違う。彼女たちは未来のことを考えながら日々を一生懸命生きている。眩いばかりの光に照らされたその濃密な時の流れは「一年」という時間軸を途方もない未来のものだと錯覚させる。 けれども、僕の見ている世界は可哀想になるくらい狭小で卑屈だ。日々を誤魔化しながら生きていくのに精一杯で、未来のことなんて、今年のクラシック戦線のことをちょっと考
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