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ブックマーク / blog.livedoor.jp/route408 (11)

  • 天然に存在した意外なもの(1) : 有機化学美術館・分館

    3月8 天然に存在した意外なもの(1) 化学者はこれまで、ありとあらゆる手法でさまざまな物質を混ぜ合わせ、自然界にはないたくさんの物質を作り出してきました。プラスチックや各種半導体など、我々の生活を支える物質も、天然には存在しなかったものです。 しかしやはり自然とは奥深いもので、人間が人工的に作り出したとばかり思っていたものが、実際には昔から天然にも存在していたというケースは少なからずあります。今までにも、ブログでいくつかそうしたケースを取り上げてきました。中には、人工の医薬品が天然の植物から見つかったと思ったら、実は使いすぎによる汚染のためだった、なんてお話もありました(「たゆたえども沈ます」さんの記事)。 しかし、どう見ても人工物としか思えない、フッ素を含んだ抗がん剤である5-フルオロウラシルの誘導体が、実際に天然から見つかった例もあります(論文)。やはり自然とは計り知れないものです

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  • まつ毛が伸びる薬・グラッシュビスタ日本上陸 : 有機化学美術館・分館

    11月22 まつ毛が伸びる薬・グラッシュビスタ日上陸 カテゴリ:医薬 「日薬局方解説書」というものをご存知でしょうか。日で用いられるあらゆる薬の詳細を解説したで、その厚さは20センチ以上にも及びます。そのくらい、医薬というものは多くの種類があるわけです。 しかし、このほどその薬局方にもない全く新しいジャンルの薬、「睫毛貧毛症治療薬」というものが登場しました。睫毛貧毛症などと言われると、いったい何の病気かと思ってしまいますが、要するに塗るだけでまつ毛が伸びるという薬です。日での商品名は「グラッシュビスタ」だそうで、なんだか名前まで医薬というよりは化粧品のような響きです。 この薬の化合物名は「ビマトプロスト」で、下のような構造です。その筋の方なら一見してわかる通り、プロスタグランジンの誘導体です。 ビマトプロスト(グラッシュビスタ) プロスタグランジンはいわゆるホルモンの一種で、構造

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  • 「コク味」の分子 : 有機化学美術館・分館

    8月26 「コク味」の分子 カテゴリ:味・におい においや味に関する表現というのは、なかなか他人に伝わりづらいものです。たとえばの話、「コクがある」という表現はよく使われますが、それって何?と聞かれると、わかるように説明するのはとても難しいのではないでしょうか。 ちょっと調べてみると、コクは基五味(甘味、塩味、酸味、苦味、旨味)に分類されるものではなく、味の深み、濃度感、充実感といった感覚のようです。いくつかの味が絡まりあったり、同じ味でも長い時間感じていると「コクがある」という感覚になるものだそうで、言葉にするには大変ややこしい、書き手泣かせの味覚です。 化学屋としては、じゃあそのコクってのは分子レベルでいうとどういうことなの?と思ってしまいます。と、実は「コク」を与える化合物というものが存在しているのだそうです。へえっ、と思ってしまいますが、そのコク味の担い手がグルタチオンだというの

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  • 新車の匂い : 有機化学美術館・分館

    6月23 新車の匂い カテゴリ:雑記 においの好みというのは人それぞれで、中には妙なにおいが好きだという人がいます。ちょくちょく見かけるのが「タクシーのにおいが好き」という人で、あれが苦手な筆者にとっては謎というしかありません。 買いたての新車には、独特のにおいがあります。これも好みが分かれるところですが、やはりこれも愛好者がいて、「新車のにおいの芳香剤」というものまで売っているようです。 ではあのにおいの正体は何なのでしょうか?先日、海外のサイトに記事がありました。新車の中の空気を詳しく分析すると、50〜60種の化合物が検出されるのだそうです。主なものの構造は下にある通りで、簡単な芳香族化合物の他、いくつかのアルカン類が見つかるのだそうです。 上段:トルエン、エチルベンゼン、スチレン 中段:キシレン類 下段:トリメチルベンゼン類 これらがいったいどこから来るかといえば、車の内装のプラスチ

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  • 安息香酸のこと : 有機化学美術館・分館

    5月25 安息香酸のこと 某ミュージシャンの覚醒剤使用騒動に伴い、「アンナカ」という言葉がマスコミに流れるようになりました。アンナカは「安息香酸ナトリウムカフェイン」の略称ですが、単独の化合物名ではありません。興奮剤であるカフェインに、溶解性を上げるための安息香酸ナトリウムを混ぜたもので、これ自体は別に違法なものではありません。処方箋さえあれば販売可能ですが、最近ではあまり使われない医薬品のようです。ただし昭和の時代には、覚醒剤の混ぜ物あるいは代用品として出回ったことがあるとのことです(参考:弁護士小森榮の薬物問題ノート) カフェイン このニュースを見た人から「安息香酸って不思議な名前だけど、なんだろう」という声があったので、ちょっとその話を書いてみます。化学者にとってはおなじみの名前ですが、由来を知っている人は少ないのではないでしょうか。 安息香酸の構造は下図に示す通り、ベンゼン環にカル

    安息香酸のこと : 有機化学美術館・分館
  • STAP細胞の「不正」とは何だったのか : 有機化学美術館・分館

    4月11 STAP細胞の「不正」とは何だったのか STAP細胞の騒動が世間を揺るがせています。特に4月9日、小保方晴子氏が久方ぶりに姿を表し、記者会見を行ったことで、騒ぎは最高潮に達した感があります。 ブログではこの件に関し、今まで何も触れてきませんでした。専門外でもありますし、あまりよい話題でもないですし、筆者は他人の不正をあれこれ論評できるような偉い人間でもありません。 ただ、9日の会見を見て、「小保方氏の発言に納得した」「彼女の言うことを信じた」という人が多数派であったのには驚きました。ネットでのアンケートでもそうですし(※)、テレビ番組での調べでも、6〜7割の人が小保方氏を支持するとの結果が出ていました。これはずいぶんとずれが生じているかなと感じたので、思い切ってこの件について書いてみます。 (※)4月12日現在では投票結果が逆転し、「納得できなかった」が多数派となっているようで

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  • 化学家紋 : 有機化学美術館・分館

    2月10 化学家紋 カテゴリ:雑記 さて先日、ツイッターで「現代家紋」というのが流行っていました。まあこんな感じ↓で、どこかで見かけたようなマークや記号を、家紋風にアレンジして遊ぼうというものです。秀逸な作品も多く、まとめもできています。 西村備山@lipoyang頭合セ三ツWiFi #現代家紋 http://t.co/BFHfaat93n2014/02/06 21:31:48 ということで、化学版の家紋というのもあると面白いかなということで、いくつか考えてみました(筆者は決してヒマを持て余しているわけではありません)。 ・亀甲 有機化学の基はやはりこれ。日の伝統文様とも違和感なくなじみます。 ・丸にフラーレン みんな大好きフラーレン。五員環を黒く塗ったほうが、紋様としては引き立つかもしれません。 ・丸に三つ水分子 水素結合している方がよいという声がありましたが、筆者の腕ではまとまりが

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  • 有機化学美術館・分館

    12月30 ドラマ「厨房のありす」を監修することになりました カテゴリ:有機化学雑記 さて、年も押し詰まったこのタイミングに、非常に久方ぶりのブログです。日は、新しいお仕事の報告などを。 というのは、来年1月より日テレ系で放送開始のドラマ「厨房のありす」の化学監修を務めることになりました。主役の八重森ありすは「料理は化学です」が口癖の天才料理人、その父は有機化学の教授、また製薬企業もストーリーに絡むなど、なかなかガッツリと化学のお話が出てきまくるストーリーになっております。 こうした内容のドラマですので、化学や医薬について正確を期さねばならず、筆者に声がかかったという次第です。もちろんテレビドラマの監修などは初めてですが、面白そうなので引き受けることにいたしました。 劇中に登場する構造式やセリフのチェック、ストーリー設定への協力、主人公の部屋に置かれる分子模型の作成など、さまざまな形で関

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  • ベンゼン環を引きちぎる : 有機化学美術館・分館

    1月18 ベンゼン環を引きちぎる カテゴリ:有機化学 よく「亀の甲」などと呼ばれるベンゼン環の正六角形構造は、有機化学の象徴と呼ぶべきものです。グラファイト、PETなど身近な物質、フラーレンやカーボンナノチューブといった先端炭素材料も、このベンゼン環の安定性を基礎に出来上がっています。一面で、PCBやダイオキシンなど、環境中からなかなか消えてゆかない有害物質の頑丈さも、このベンゼン環の安定性に由来するものです。 PCB(上)とダイオキシン(下)。いずれも一例 ベンゼン環の持つこの安定性は、6つの炭素が持つπ電子が共鳴し、全体に行き渡って(非局在化)いることによります。図の上では単結合と二重結合が描いてありますが、実際には全てのC-C結合は1.5重結合というべき等価なものになり、安定化しています。この効果こそが、有機化合物の世界を格段に幅広く、奥深くしているといっていいでしょう。 ベンゼン

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  • 有機化学美術館・分館:漆山 智之氏の”「DMHO」の正体と悪魔の証明”という記事について - livedoor Blog(ブログ)

    日、帰りの電車内でツイッターを眺めていたら、偶然こんな記事が目に入りました。「言論プラットフォーム アゴラ」に掲載されていたブログ記事です。 「DMHO」の正体と悪魔の証明 --- 漆山 智之 アゴラ編集部 / 記事一覧 DMHO(dihydrogen monoxide)という化学物質があります。この物質の特徴は以下の通りです。 (1)酸性雨の主成分である (2)強い温室効果を持ち、地球温暖化の原因となっている (3)高レベルのDHMOにさらされることで植物の成長が阻害される (4)末期ガンの腫瘍細胞中にも必ず含まれている (5)固体状態のDHMOに長時間触れていると、皮膚の大規模な損傷を起こす (6)多くの金属を腐・劣化させる (7)自動車のブレーキや電気系統の機能低下の原因となる この物質は日中の工場で冷却・洗浄・溶剤などとして何の規制もなく使用、排出され、

  • スライムの青のこと : 有機化学美術館・分館

    12月1 スライムの青のこと さて昨日からツイッターなど眺めておりますと、どうやらこいつが大人気のようであります。 ずどーん。 ドラゴンクエスト発売25周年を記念した、ファミリーマート限定で売っている「スライム肉まん」なのだそうです。実は筆者はドラクエなるものを一度もやったことがなく、この形態を見ても何の感興も呼び起こされないのでありますが、まあかつてやりこんだ方々にはたまらない商品なのでありましょうね。 しかしこの商品、色が普通の肉まんにはあり得ないスカイブルーです。青ってのは基的に欲を失わせる色なんだそうですが、まあこの場合やむなしでしょう。しかしこの色を何で出しているのか、化学者としては気になるところです。青色1号か何かかなと思ったら、「合成着色料を一切使用しておりません」とのことです。天然由来のものってことですね。 青色1号。いかにも人工な構造。 実は生物界にあって、青という色

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