これまで、うつ病患者の脳に関する心理学的研究は、個人差をあまり考慮せず、主にグループ平均に基づいて行われてきた。多くの場合、これらの研究では「スナップショット」的なアプローチが取られ、追跡調査や比較をせずに、ある時点での脳活動を捉えていた。 この定型的なアプローチによって、うつ病について多くのことが明らかになった一方で、その多様な性質を理解するには深さが不足していた。しかし、2024年9月に『ネイチャー』誌に発表された研究は、このギャップを埋めるもので、その結果は驚異的だった。 この記事では、研究者のチャールズ・リンチとコナー・リストンが、うつ病患者では脳の神経回路の1つである「セイリエンスネットワーク」が2倍の大きさになっていることをどのように発見したのか、そしてそれがどのような意味を持つのかを解説する。 ■うつ病患者の「セイリエンスネットワーク」は2倍の大きさ 「うつ病は『再発と寛解を