玉水物語 2巻 | 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ ※この記事では、京都大学貴重資料デジタルアーカイブの画像を、適宜改変して使用しています。 【原文】 の心の内」と口々に申しけれバ、 「何事にかあらん。心の中こそゆかしけれ。恋とやらんか。また人に恨むる心などか。怪しくこそ」とて、 「五月雨《さミだれ》の 程ハ雲井の 郭公《ほととぎす》 誰《た》が思ひ寝《ね》[「音《ね》」ともかかっている]の 色を知るらん」 玉水やがて、「心から 雲井を出でて 郭公《ほととぎす》 何時《いつ》を限りと 音《ね》をや鳴くらん」 月冴え、「覚束《おぼつか》な 山の端《は》出《いず》る 月よりも 猶《なほ》鳴き渡る 鳥の一声《ひとこゑ》」など言ひ交ハし、夜も更けぬれバ、内へ入らせ給ひ ぬ。され共《ども》、玉水は「月の残り多く侍《はべ》る」とて、残り居て、越し方、行く末、打ち案じ、「扨《さて》も我ハ、何時《いつ