世界に知られる日本最古の長編小説の著者、紫式部。1000年前に生きたひとりの女性の実像を、大河ドラマの時代考証を担当する古代史研究者が詳(つまび)らかにする。 『石山寺縁起絵巻』(部分) 全7巻からなる重要文化財『石山寺縁起絵巻』(石山寺蔵)の巻四に描かれた紫式部の姿。石山寺に参籠中、本堂から琵琶湖に映る月を眺めて『源氏物語』の着想を得たと伝承されている。 「藤原道長に才を認められ、娘に仕えた女房が書いた物語です」 平安時代中期に記された日本最古の長編小説『源氏の物語』(以下『源氏物語』)の作者として知られる紫式部 の生涯を描く、令和6年の大河ドラマ『光る君へ』。 本作の時代考証を務める日本古代史研究者の倉本一宏さんに、紫式部という人物と、その時代背景について話を伺った。 「紫式部は、同時代に生きた藤原実資の日記『小右記』などに登場するため、実在が証明されているこの時代の数少ない女性のひと