尚古主義にもとづく注音字母 中国語は漢字で表記されるが、漢字を見ただけではどのように発音するかよくわからない。そこで使われているのがピンイン(拼音と書く)で、ローマ字のアルファベットを使用して発音を表している。ピンインの表記方法が使われるようになったのはそれほど昔ではなく、現在の中華人民共和国の成立後、1950年代後半からのことだ。今回はどのようにしてピンインが定められることになったのか、見ていこう。 ピンインは、最初は「ピンイン文字」と呼ばれた。本連載ですでに触れたように、中華人民共和国では、最終的には漢字を廃止してより「進化した」文字である表音文字に切り替えようと画策していた。つまりピンインは本来、発音記号のようなものではなく、やがては漢字にとって代わるべきものとして発案されていたのである。 表音化の先駆として最初に名前が挙がるのが、盧戇章の『一目了然初階』(1892年)だ。盧は英語を
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