刑事裁判の法廷で、傍聴人に証人の声が聞こえなかったのは「裁判の公開を定めた憲法に反する」として、裁判を傍聴した弁護士が国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が10日、東京高裁であった。園尾隆司裁判長は「証人の声を傍聴人に聞こえるようにする義務はない」と述べ、請求を棄却した一審・東京地裁判決を支持し、弁護士の控訴を退けた。 訴えたのは塚田育恵弁護士(東京弁護士会)。判決などによると、2012年にさいたま地裁であった殺人事件の公判で、地裁は法廷外の部屋にいる証人にモニターを通じて質問する「ビデオリンク方式」を実施。この裁判の被告の共犯として起訴された男の弁護人を務めた塚田弁護士が傍聴席にいたが、証言の大半が聞こえなかった。 この日の判決は「裁判の公開の原則」について「保障されるのは公正さ」と指摘し、「傍聴人が証言をつぶさに知る権利を与えたものではない」とした。判決後、塚田弁護士は「傍聴人の権利を