理由はいくつかある。ここ数回、世間で知名度が高くなった作品に授賞した例がないから、というものもそのひとつだ。 第149回、第150回のいとうせいこう(『想像ラジオ』『鼻に挟み撃ち』)、第150回の岩城けい(『さようなら、オレンジ』)などがそうだ。厭らしい言い方だが、すでに十分売れた作品の書き手にさらなる追い銭を遣るだろうか、という疑問が浮かんでくる。 候補者のうち、「火花」の又吉直樹と「MとΣ」の内村薫風のみがいかなる新人賞も受賞していない(内村が覆面作家の別名義でなければ)という「文壇に対する身内感のなさ」もある。 新人ゆえのまだ甘い部分 しかしそういうどうでもいい理由は別にしても、又吉直樹にはくれないのではないか、という気がする。 「火花」を私はおもしろく読んだ。これは売れない漫才コンビのボケ担当である徳永(僕)という男が、先輩芸人で同じく売れない漫才コンビを組んでいる神谷と出会い、そ
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