これまで嫌われものだった生き物が、化学工業の現場に革命をもたらし、人の役に立つかもしれない。JST 戦略的創造研究推進事業 浅野酵素活性分子プロジェクトの浅野泰久(あさの やすひさ) 富山県立大学教授らは、毒ガスのひとつである青酸ガスを作る「ヤンバルトサカヤスデ」に注目し、大量発生したヤスデ30キログラムの体液から「ヒドロキシニトリルリアーゼ」とよばれる酵素を抽出した。この酵素が産業利用されれば、抗炎症剤や心臓病薬など幅広い医農薬品の原料を、今までより安く、品質よく作れる。これまでの開発手法と何が違い、今後どんな波及効果が期待されるのだろうか。 既存の産業用触媒にも勝る、ヤスデの酵素 浅野教授が長年探してきたのは、化合物「マンデロニトリル」の合成を促す酵素だ。これは多くの医農薬品の原料として需要が高い化合物で、ベンズアルデヒドと青酸から合成される。そんな浅野教授の耳に飛び込んできたのが、「