英語圏の学術出版の奇妙な点の1つは、題材がどれほど難解であろうと、本のカバーにイラストを載せたがることだ(フランス語圏やドイツ語圏ではこうはならない)。これは恐らくビジネスのためにやっているのではなく、単なる慣習に過ぎない。表紙を絵にしたところで学術書の売上が伸びるなどとは思えないからだ。いずれにせよ、こうして哲学者は苦境に立たされることになる。若手のデザイナーに「結局この本は何についての本なんですか?」と聞かれるはめになるのだ。 そんな事情もあり、大学院生の頃、私の学位論文の指導教員だったトマス・マッカーシーが、フランシスコ・デ・ゴヤのとある絵を見つけてきたときの興奮は、今でもありありと思い出せる。それは、「理性の眠りは怪物を生む」という文言が刻まれたエッチングの絵だった。マッカーシーは、長年にわたりアメリカにおけるハーバーマスの右腕として活躍し、ハーバーマスの記念碑的著作『コミュニケー

