沖縄本島南部で暮らす50代の女性の記憶に、50年前の1972年5月15日の出来事が深く刻まれている。【喜屋武真之介】 米兵のやったこと、全部返ってきた その日、沖縄は戦後27年間の米国統治を脱し、日本本土に復帰した。女性が通っていた小学校の教室では教諭が児童たちの席を回って、紅白まんじゅうと記念メダルを配った。「あなたには関係ないよね」。教諭はそう言って女性の席を通り過ぎた。「なんで?」。当時はぼうぜんとするばかりだったが、後に気付いた。自分の父が米軍の兵士だったからだ、と。 太平洋戦争末期の地上戦で沖縄を占領した米軍は小さな島の至る所に基地を建設した。52年に日本が主権を回復した後も、72年の本土復帰まで米軍の施政権下に置かれた沖縄。圧政に抵抗して「異民族支配」からの脱却を求める人々がいた一方で、生きていくために基地従業員として働く人たちや、米兵を客に飲食などを提供する人たちがいた。そし