家路を急ぐ人たちで混み合う平日のJR上野駅、電光掲示板に「寝台特急 北斗星」の赤い文字が映し出される。発車の約20分前、11両編成のブルートレインが入線し、切符片手に客車に乗り込み旅装を解く旅行者、持ち場に着いて準備を始める車掌や食堂車スタッフ、それぞれが出発の19時3分を待つ。上野と札幌を結ぶ1200キロ超の鉄路を一夜で駆け抜ける──旅への期待が膨らむひと時だ。やがてアナウンスが出発を告げ、列車は走り出した。 旅情漂う、レトロな寝台列車 シャワー付きロビーカーや食堂車、A寝台個室を連結した北斗星が1988(昭和63)年にお目見えした時、「日本初の豪華寝台列車」と呼ばれた。当時、世間の目にまさに輝く星のごとく映っただろう。約10年後、全室A寝台個室の「カシオペア」が登場。当初1日3往復だった運行本数は1往復まで減った。現在は車体の老朽化もあって「レトロな寝台列車」の趣が強い。狭い通路は、