岸田文雄首相が年頭会見で表明した「異次元の少子化対策」に不可欠な「子ども関連予算の将来的な倍増」について、増額の規模や時期など詳細を示そうとしない。政府内の議論を踏まえると、倍増には年5〜6兆円の新たな財源が必要になるとみられるが、政府・与党にとって、4月の統一地方選を控えて増税など負担を巡る議論は避けたいのが本音。首相就任前から打ち出していた「公約」にもかかわらず、曖昧な遠い将来の目標になりかねない。(坂田奈央)
10代続けて日銀OBが社長に就任しているのは、おかしいのではないか。物言う株主(アクティビスト)から、そんな疑問をぶつけられ、「天下り」の実態調査を求められている上場企業がある。会社側は天下りを否定し、全面対決の様相をみせる。敵対的買収や役員交代など、過激な要求が注目されるアクティビストだが、近年はガバナンス(企業統治)の問題点を指摘するなど、現実的な提案も増えてきた。かつて「強欲」と非難された物言う株主は今—。 (岸本拓也) 「天下り」の指摘を受けたのは、東京・兜町の東京証券取引所近くに本社を置く日本証券金融(日証金)。証券会社に取引用のお金や株式を貸し出すのが主な業務で、公共性の高い金融機関。東証最上位のプライム市場に上場している。日銀と資本関係はないが、1950年の上場以来、現在の櫛田誠希(しげき)社長(64)まで10代続けて日銀の理事経験者が社長になっている。
名古屋刑務所(愛知県みよし市)で刑務官22人が受刑者3人に暴行などを繰り返していた問題で、刑務官による不適切な処遇は400件以上に上り、うち暴力を伴う行為が100件を超えることが法務省への取材でわかった。一部の刑務官は暴行が常態化していたとみられ、同省は調査を進めた上で、関係者の処分などを検討する。 同省によると、22人は昨年11月上旬〜今年8月下旬、40〜60代の男性受刑者3人に、計400件超の不適切な処遇をしていた。うち100件超は暴行で、胸ぐらをつかんだり、顔にアルコールスプレーを噴射したり、顔や手をたたいたりするなどの行為をしていた。暴行以外では、暴言を吐いたり、部屋に物を投げ入れたりするなどの行為が確認された。
東京電力福島第一原発事故後に政府が封印してきた原発の建て替え(リプレース)などを柱とした経済産業省の原発活用案を、同省の有識者会議は16日の会合で了承した。福島事故の収束作業と被災者への賠償が続く中、岸田文雄首相の指示からわずか5カ月弱で原子力政策の転換を明確にした。政府は年内に開くグリーントランスフォーメーション(GX)実行会議で正式決定する。 総合資源エネルギー調査会基本政策分科会で西村康稔経産相は、安全性の確保と立地自治体の理解を前提に「廃止決定した炉の次世代革新炉(次世代型原発)への建て替えの具体化を進めたい」と述べた。 原発の運転期間は福島事故後の法改正で「原則40年、最長60年」と制限されたが、原子力規制委員会の審査などによる停止期間を除くことで60年超の運転を可能にする。政府は、来年の通常国会に改正法案を提出する見通し。
平和主義をうたう憲法を横目に、再び戦争への道を歩むのか。国会での議論もなく、増税による防衛力強化や敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有に道筋を付けた16日の閣議決定。反戦を訴える人や識者からは、懸念の声が相次いだ。
敵基地攻撃能力(反撃能力)を保有しても、日本の安全は高まらないと考える。攻撃を受けたときに限って武力行使をするとした専守防衛という長年の宣言政策の信頼が低下し、他国の不安をかき立てる。周辺国との緊張が激化して、さらに軍備競争が加速する「安全保障のジレンマ」から抜け出せなくなるからだ。 例えば、1998年の北朝鮮のミサイル発射実験を受けて日米で共同研究を進め、日本政府は2003年に弾道ミサイル防衛(BMD)システムの整備を閣議決定した。だが、これは相手国のミサイルの軍事的効果を相殺するため、BMDの対応力を超えるミサイル開発への誘因となった。防衛力強化を期待して行ったことが逆効果となり、安全保障環境を悪化させたことを政府・与党は自覚した方が良い。
自民、公明両党は12日、政府の外交・安全保障政策の指針「国家安全保障戦略」など安保3文書の改定内容に合意した。敵基地攻撃能力(反撃能力)保有や防衛費の大幅増を了承したが、15回にわたる実務者協議は非公開の「密室」で、議事録は公表されない。政府は国会で「検討中」と曖昧な答弁に終始。戦後の安全保障政策の大転換にもかかわらず、国会で内容を巡る議論を素通りしたまま、政府は16日にも改定3文書を閣議決定する。(川田篤志、市川千晴) 与党協議は10月中旬に始まり、実務者による協議は毎週1〜2回のペースで計15回、両党幹部でつくる親会議は2回開かれた。実務者協議には政府側も出席し、敵基地攻撃能力の保有をはじめとした3文書改定の素案を提示。両党が協議し、了承する形をとった。 協議は非公開。毎回、協議終了後に両党の代表者が記者団の取材に応じるが、政府の素案の内容や出席者の発言は「合意前なので」などと説明しな
東京電力福島第一原発事故の後始末について重要な動きが出た。除染土再利用の実証事業を福島県外で初めて行う計画だ。県内で中間貯蔵する除染土を再利用で減らすというのが環境省の言い分で、16日に埼玉県所沢市内、21日に東京都新宿区内の事業について説明会が予定され、他地域でも実証事業が取り沙汰される。これらの地域で再利用が浮上したのはなぜか。汚染拡散につながる再利用を安易に進めていいのか。(特別報道部・岸本拓也、中山岳)
自衛隊と米軍が今月、3万6000人を投入して実施した大規模共同演習「キーン・ソード23」。精密誘導弾などの実弾射撃を行い、長射程化で敵基地攻撃能力への転用を念頭に置く「12式地対艦ミサイル」発射準備の手順も確認した。見据えるのは、台湾侵攻も辞さずに軍拡に突き進む中国だ。 「日米の戦力を向上させ、よりダイナミックな能力と可能性を追求し続けることが日米同盟に貢献する」。海上自衛隊鹿屋航空基地(鹿児島県鹿屋市)から自衛隊機で1時間半ほど飛行した先の太平洋上を進む海自最大の護衛艦「いずも」の艦内。在日米軍トップのラップ司令官は、自衛隊の山崎幸二統合幕僚長と並んだ記者会見で力説した。 ラップ氏の言う「ダイナミックな能力と可能性」が指すのは、ステルス戦闘機F35Bが離着陸できるよう事実上の空母化への改修が進むいずもの評価。だが、言外には日本の敵基地攻撃能力保有への期待もにじむ。いずもからF35Bが発進
鈴木俊一財務相は9日の防衛力強化に関する政府の有識者会議で、防衛費を増額する場合は国債に頼らず恒久的な財源を確保すべきだと主張し「税制上の措置を含め多角的に検討する」と強調。財務省は同会議への提出資料で「幅広い税目による国民負担が必要」との方針を鮮明にした。自民、公明両党の幹部からも、所得税や法人税を数年後から引き上げ、増税で財源を確保すべきだとの意見が続出している。 財源を巡っては当初、安倍晋三元首相が「防衛費は祖国を次の世代に引き渡していくための予算だ」と位置づけ、借金である国債を提案したが、死去後は下火になり、増税論が台頭している。2023年度の予算案や税制改正大綱が決定される年末までに、政府・与党が一定の方向性を打ち出す見通しだ。
自民党の杉田水脈(みお)総務政務官が、9日の参院倫理選挙特別委員会で答弁を控える場面が、確認できただけで5回もあった。誹謗(ひぼう)中傷ツイートへの「いいね」問題の裁判で、最高裁へ上告した理由を問われてのことだ。これまでも、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係も含めて答弁を「控える」事例が続く杉田氏。一方で政務官ポストを続投する姿勢は変わらない。(奥野斐) 杉田氏は性暴力被害を公表したジャーナリスト伊藤詩織さんを中傷するツイッター投稿に「いいね」を押し、東京高裁判決で名誉毀損(きそん)と認定された。これを不服として今月2日に最高裁に上告。その理由などを9日の同委員会で立憲民主党の石川大我(たいが)氏に問われ「係争中なのでコメントは控えたい」「裁判に影響を与えるような発言は控えたい」などと繰り返し述べた。 杉田氏は2018年、月刊誌「新潮45」8月号に同性カップルらを念頭に「彼ら彼女ら
「異次元」と言われる日銀の大規模な金融緩和策の導入から来年4月で10年。デフレ脱却を掲げ、当初2年で目標達成を目指した黒田東彦総裁(78)だが、志半ばで任期を終えそうだ。最近は日銀の政策が円安を加速させ、世界的な原材料高騰も相まった物価高が国民生活にのしかかる。何が異次元緩和の誤算だったのか。元日銀理事で、みずほリサーチ&テクノロジーズの門間一夫さん(65)に疑問をぶつけながら考えた。(特別報道部・岸本拓也) 異次元緩和 日銀が2013年4月から続ける「量的・質的金融緩和」の通称。国債などを前代未聞の規模で購入し、市場に巨額資金を供給。16年からはマイナス金利を導入し、長期金利を0%程度に抑え込んでいる。巨額の買い入れで、21年度末の日銀の総資産は736兆円と、異次元緩和前の4倍超に膨らんでいる。
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