イニング途中で交代が告げられても、広島大瀬良大地はマウンドを降りようとはしない。 交代に抗議の意志を示しているのではない。自分への怒りというわけでもない。 理由は、代わりに登板する中継ぎ投手に声をかけるためだ。 7月18日、甲子園での阪神戦がそうだった。9点の大量援護をもらい、7回まで3安打投球。だが、8回に2四球などで満塁とし、押し出し死球で失点をした直後に交代を告げられた。点差や球質を考えると厳しい継投の判断。自他への怒りで足早にベンチに引き上げても不思議ではないが、大瀬良はリリーフカーに乗る2番手・中崎翔太がマウンドに来るまで待った。 「ごめん。頼んだ」 そう言ってマウンドを降りる。 大瀬良という選手はそういう投手なのだ。 「優しい人間は生き残れない」と言う人もいるが……。 その日だけじゃない。降板しても、ベンチの最前列で声を張り上げる。好投しても、不甲斐ない投球であったとしても、仲
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