■「価値一般」を串刺しにする思考 吉本さんには、まとまった経済学の著作といったものはない。しかし経済の問題は、文学や政治の問題と並んで、吉本さんの重大な関心領域であり続けた。スミスやマルクスの経済学を学ぶことから出発しながら、現代の新しい現実と格闘しているうちに、吉本さんは独力でひとつの体系をつくってしまった。 その体系はいわばヴァーチャルなもので、目に見えるかたちでは、折にふれての思考としてしか表現されなかった。それでも、それらをつなぎあわせてみると、とても未来的な可能性を秘めている、ひとつの経済学の一貫した考え方が、浮かび上がってくる。 初期の『言語にとって美とはなにか』の中で、吉本さんはマルクスが経済の研究から着想した「価値」の概念を、文学の領域に創造的に転用することで、言語学や文学理論のはるか先を行く視点を、切り開いてみせた。増殖するというのが、価値の重要な特徴である。じっさい私た
■根を下ろし見えた中国と日本 日本より中国で有名だ。新聞やテレビで流暢(りゅうちょう)に政治や社会を論じ、中国版ツイッターには75万人の読者がいる。中国語の著書は7冊あるが、日本では本書が初の書き下ろし。 子供の頃から背が高く、目立つタイプで浮いていた。息苦しくて世界に出ることを夢見た。高校に来た北京大学の幹部に自分をアピールすると、国費留学生として迎えられた。 2005年、反日デモを見に行った学生としてテレビで意見を言うと、翌日から引っ張りだこに。 なぜ若い日本人の声に、中国はそれほど耳を傾けるのか。 成長著しい中国にとって、世界からどう見られているかは大きな関心事だ。しかし「中国語で、中国の人に向けて発信する外国人がいなかった」。言論のタブーはあるが、制約が明確な分、「空気」に萎縮する日本より自由と感じる瞬間もある。 根を下ろして人と交わったから見えた中国がある。中国人の自己主張の強さ
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く