「引きこもりがまた増えるんじゃないかな」。大みそかから連載した企画「孤独の岸辺」のため、引きこもりの若者たちを取材していた昨年末、何度もこの言葉を聞いた。ちょうど「派遣切り」のニュースが大きくなり始めたころだ。取材を通じ、人を物のように切り捨てるこの国の有りようと引きこもりの問題は、無関係ではないと感じた。 引きこもりは民間推計で100万人規模。最近は長期化や高年齢化が問題になっている。神経症や精神疾患を伴うこともあり、将来を悲観した自殺や心中も後を絶たない。72年生まれの私は、引きこもりの長期化に苦しむ同世代が多いことにショックを受け、同世代に絞って取材を進めた。 企画では、社会との接点を持とうと苦悩する男性や、引きこもりの長男を支える父親の思いを描いた。読者の反響は大きかった。ある母親は「33歳の長男は同じ屋根の下で全く会話がなく、夜半に食べるものがないと暴れています。夫も病気で、少し