からつづく。 日本人が理想とする企業社会と近代経済学の喰い違い 著者は、近代経済学には「日本人の持つ伝統的な価値観とは相容れないものがある」と指摘している。 しかも、それを著者はずうっと軽視してきたが、大学の講義を聴く学生たちはその重大さに最初から直感的に気づいていたと反省する。 「アダム・スミス以来の経済学では、人間を『ホモ・エコノミクス(経済人)』として定義する。 すなわち、近代経済学に登場する人間は、自らの満足を最大化する目的を持って合理的に行動する存在であり、『社会』という概念は入り込む余地がない。社会がどうあるべきかに関しては、マーケットが最適な資源配分を実現するという観点が提示されているのみであり、所得分配や最適な公共財の供給などは投票によって決めればよいとしているのみである。(中略) 個人は社会とは独立したアトム的な存在であり、こうした利己的な経済人がそれぞれ自分の満足や利益