数学に圏論という分野が出来てから半世紀ほど経つ事になる.大学の数学科過程で登場する集合位相,複素解析,環論体論などと比べれば,これはかなりの「若手」である.それゆえか,いまだに日本の数学課程で圏論の授業が行われることは(集中講義などを除けば)ほとんどない.(これは海外でも大差ないという話を聞く.)しかし,ひとたび大学院に入ると,幾何学や代数学を扱う人は,勝手に「圏論」の言葉が出てくる事に驚くかもしれない.圏論は現代数学の言葉として当然のように用いられ,その基礎学習は自習に任されるというのが現状である. しかし,このことは大きな問題を生み出している.というのも,少し齧った程度の自称「専門家」が様々な「圏論万能論」といった怪情報をインターネットに発信してしまっている事が多く見受けられる.また,当然のことながら「どの程度勉強するか」というのは,何をどのように専攻しているかに依存する.にも関わらず