不振に喘ぐ主砲を救ったのは、愛と友情のバットだった――。 ドジャースの2勝1敗で迎えたナショナル・リーグ優勝決定シリーズ第4戦の5回表、第3戦までポストシーズン7試合で26打数2安打、0本塁打0打点の悩めるカブスの3番アンソニー・リゾが打席に入った。手にしたバットには“Rizzo”という名前もなければ、彼の背番号“44”の刻印もなかった。あるのは“Szczur”という文字と、グリップエンドに白いマジックで書かれた“20”のみだった。 「少し気分を変えて打席に立ちたいと思ったからなんだけど、実はシーズン中から時々、彼のバットを借りて打っていたんだ」 と、試合後のリゾ。「彼」とは同僚で「ムネリン」こと川崎宗則同様、ポストシーズンの出場登録枠から外れながらもベンチ入りを許されたマット・シーザー外野手のことだ。20はもちろん、シーザーの背番号である。 借り物のバットで、ソロホームランを叩き込んだ。
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