『口から食べられなくなったらどうしますか 「平穏死」のすすめ』という本が今年の2月に出版された。著者は、40年以上外科医として活躍してきた石飛幸三医師。2003年刊行の『患者が決めた! いい病院ランキング』(オリコン・メディカル刊)では外科部門の1位になるなど、患者からも高い評価を得てきた医師だ。 同氏は現在、東京都世田谷区にある特別養護老人ホーム「芦花ホーム」の常勤医を務める。入居者の平均年齢は90歳で、9割が老人性認知症を患っている。長寿社会のまさに縮図である。 外科医時代は多くの患者を手術によって死から生へと引き戻すことが医師としての勝負であったが、今は人生の終末をいかに安らかに迎えるかという点に重点を置く活動に従事している。いわば、真逆の立場である。 そんな石飛医師が上梓した『「平穏死」のすすめ』には、高齢化社会を迎えた我々が考えるべき医療のあり方への示唆が満ちている。