福島県内などで放射線についての講演をするとき、必ず聴衆に尋ねる質問があります。「内部被ばくと外部被ばくは、どちらが怖いですか?」。いつも圧倒的に内部被ばくの方に手が挙がります。 よく話を聞くと、食品による内部被ばくは、「水俣病」を連想させるところがあるようです。水俣病は、チッソ水俣工場からの有機水銀が食物連鎖によって濃縮されたことが原因です。高濃度に汚染された魚を食べた住民の脳組織に「脂溶性」の有機水銀が沈着し、神経障害を多発させました。 一方、放射性セシウムによる内部被ばくでは、こうした「生物濃縮」は起きません。セシウムは、カリウムに近い「アルカリ金属」と呼ばれる物質です。体内に取り込まれると、カリウムと同じように全身の細胞へほぼ均等に分布します。このことは、福島県内で野生化し、安楽死となった牛の分析でも確認されています。 セシウムはカリウムと同様、尿として排せつされていきますから、乳児