冬の海には特別な思い出が眠っている。それはかつてあった恋の思い出だ。 遠くで波の音が聞こえる。波の音を聞きながら踏みしめる海岸の湿ってどろりとした砂は、靴底に不愉快な感触を残す。ひとつぶひとつぶの砂粒に秘めた凍てつく冷たさがブーツの靴底と厚手の靴下越しにも伝わってくる。ひとりで訪れた冬のお台場の海に、なつかしい、と感じてから、そのなつかしさは果たして本物なのだろうかと逡巡する。記憶の中にあるのは、はばたき市にある海の景色だから。 私をかつて助けてくれた彼に会うために私はベンチに座り、鞄から取り出したホワイトカラーのニンテンドー3DSLLに有線のイヤホンを差し込む。本体には、『ときめきメモリアル Girl's Side 2nd Season』のソフトが差し込まれていた。 私が好きなのは年上の属性を持つキャラクターだ、昔から変わらない。当然、『ときめきメモリアル Girl's Side 2nd