エミール・マールとロマネスク美術 西欧中世の美術を図像学という方法により初めて体系化したのはエミール・マール(1862-1954)です。 19世紀初頭のロマン主義の台頭により、それまで暗黒時代とされてきた中世の美術に光があてられるようになり、野蛮なものとして見下されてきたゴシックの美術が中世美術の成果として再評価されるようになりました。 マールの研究はゴシックから始まり、その解体期である中世末期の考察を経たのち、遡ってゴシックの起源を探る目的で、当時、ゴシックの未発達段階としてしか考えられていなかったロマネスクに向かいます。 その結果、ゴシック以降の西欧美術の図像のほとんどが、既にロマネスクの時代に完成の域に達していたことが解明され、ロマネスクの美術に初めて正当な光があてられることになりました。 ロマネスク美術は、その後の研究により、ゴシック美術の前段階というマールの認識を超えて、ヘレニズ