スパイ小説の大家ジョン・ル・カレの自伝的作品「地下道の鳩」の翻訳(加賀山卓郎訳 早川書房)が出たので読んでみるといろいろなことがわかってきました。ジョン・ル・カレことデイヴィッド・コーンウエルとは若い頃ちょっとした接点があったのです。時期は1961年から1~2年間。場所は当時西独の首都ボン。コーンウエル(以下ル・カレ)はイギリス大使館の二等書記官。私は日本大使館の三等書記官で、歳は先方が2つばかり上。きっかけは忘れましたが、似たようなランクの同業ということで知り会ったのでしょう。 親しいというほどの仲でないながらパーティなどで見かけると話しかけるようになったのは、先方のドイツ語が達者でしかも西ドイツの政情について豊富な情報を持っていたからです。ル・カレのドイツ語は英米人に特有な訛がなくすこぶる流暢。英語が苦手な私には楽でした。また自伝が明らかにしたようにそのとき彼は実はイギリスの諜報機関M
ネレ・ノイハウスやフォルカー・クッチャーは、近年、進境著しい「新世代」ドイツミステリの旗手であり、ドイツの書店の店頭でも、ミステリ系としては北欧ものと並んでもっとも目立つ場所に置かれていることが多いです。 といっても、実は、彼らがドイツ国内で最も売れているドイツ人(&ドイツ語圏人)ミステリ作家というわけではない。そうなんです。実売ナンバーワンのドイツミステリ作家は、シャルロッテ・リンクです。(2011年時点の数字による) シャルロッテ・リンクとは何者か? いかなる特徴を持つ作家なのか? 日本でも彼女の長編小説『姉妹の家』が訳出されており、この作品には彼女の作風のアレコレが凝縮されているので、解析のベースとしたいと思います。 これはいささか主観的な言い方ですが、シャルロッテ・リンクはドイツの旧世代ミステリ作家に属します。旧世代の特徴にもいろいろありますけど、この作品で顕著なのは 1. メロド
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く