そして、よみがえる世界。 作者:西式 豊早川書房Amazonこの『そして、よみがえる世界。』は第12回アガサ・クリスティー賞の大賞受賞作である。前回のアガサ・クリスティー賞の受賞作は話題沸騰の逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』だったのでその次の選考にはさすがにプレッシャが(大賞決定後には著者にも)かかったと思うが、本作も『同志少女〜』とは別方向で新たな書き手の可能性を切り開いてくれるような作品だ。ジャンル的にはSF要素がガッツリ謎の発生とその解決に関わってくるタイプのミステリで、SF読者的にも満足度が高い。 あらすじ・世界観など。 物語の主な舞台になっているのは2036年。仮想空間であるVバースや介助用ロボット技術が発展し、身体障がい者にとっても(2022年と比べると)比較的過ごしやすい環境が整っている時代。物語の主人公である牧野は、事故で脊髄を損傷して首から下の運動と知覚を完全に失ってしま