1世紀近く前に確立された学問でありながら、現代人が持っている「科学の常識」ではなかなか理解しがたいのが、量子力学の世界だ。たとえばその基本となる「量子」という概念は、通常「粒子」だと考えられている電子や、「波」と考えられている電磁波などがいずれも「波であると同時に粒子である」という。さらにそれらを測定しようとしても、「不確定性原理」により位置と運動量を、同時に正確に知ることはできない。──そこで、今世紀に入って急速に発達してきたミクロな世界の実験成果を背景に、量子力学の基礎を問い直そうという筒井泉准教授を、つくばにある高エネルギー加速器研究機構・素粒子原子核研究所に訪ねた。 量子力学は1920〜30年代に完成され、それまであった古典物理学の根底を──相対性理論よりももっと激しく──変えたんですね。ですから当時、非常に混乱した。その象徴的な例がアインシュタインとボーアの論争なんです。アインシ