タキソール(パクリタキセル)はタイヘイヨウイチイの樹皮より単離された天然物です。本天然物は顕著な抗がん活性を示し、乳がん、卵巣がん、肺がんなどの治療薬として、広く臨床利用されています。その強力な抗がん活性は、特異な炭素骨格上の多数の極性官能基の三次元的配列に起因します。タキソールは構造的特徴として、6/8/6員環が高度に縮環した3環性炭素骨格上に、歪みのかかった橋頭位オレフィンやオキセタン環、8つの酸素官能基および9つの不斉中心を有することが挙げられます。このように複雑な三次元炭素骨格上に、多数の酸素官能基が密集した天然物を有機合成化学的に組み上げていくことは極めて困難であり、タキソールの全合成は有機合成化学上、極めて挑戦的な課題です。 今回、東京大学大学院薬学系研究科の今村祐亮 博士研究員、高岡恭兵 大学院生、小森優真 大学院生、長友優典 講師、井上将行 教授の研究グループは、分子間およ
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