福島県は日本屈指の米どころである(全国4位)。 そして、天栄村(福島南部)の米は全国コンクールで3年連続「金賞」を受賞している。つまり堂々の日本一だ。 しかし、その最高の栄誉ですら、放射能という疑心の前には無力であった。 原発事故直後、天栄村のコメ農家たちは頭を悩ませていた。 「味をとるか? 安全をとるか?」 土壌の放射性物質を軽減するには、「カリウム」や「ゼオライト」などの物質を田んぼに撒かなければならないと聞いたからだ。 それが、なぜ味に影響するのか? 「カリウム」は化学肥料である。これを余計に撒くということは、コメが栄養過多になる。 栄養のやり過ぎは「甘いモノの食べ過ぎ」に同じで、身体(草丈)ばかりが大きく育ち、肝心の米粒(種)の発育が疎(おろそ)かになってしまう。その結果、「味が落ちる」。 「ゼオライト」の撒き過ぎも良くない。 こちらは、逆に稲に必要な「栄養素」まで奪ってしまう。