一人の人間の中で分人化が起こりやすいというのが、近代の特徴だと思います。近代の特色の一つは、移動の自由でした。スタンダールやバルザック、フローベール、夏目漱石などは、中央集権化による上京物語を書いています。 地方からパリの町に田舎者の青年が成功を目指してくる『ゴリオ爺さん』のラスチニャック、熊本の高校から東京へ出る『三四郎』、逆に『坊っちゃん』のように、東京から地方に赴任する登場人物もいます。 生活環境が激変する彼らは、コミュニティに適応するために、どうしても分人化せざるを得ません。 (平野啓一郎『文学は何の役に立つのか?』岩波書店、2025) こんにちは。一昨日の夜に上京し、赤坂にある双子のライオン堂(書店)に足を運びました。今井楓さんの『いい子悪い子働く子』と、小田垣有輝さんの『お笑いを〈文学〉する』のW刊行記念トークイベントに参加するためです。イベントのタイトルは、 「働くを〈文学〉

