妻の治療終了とともに私の通院付き添いも終わりましたが、それまで三年間、三週間に一度の通院が習慣化していて、それがなくなってしばらくの間は、ほっとした気分と何となく落ち着かない感覚に囚われました。 妻が抗がん剤を投与している間、付き添いの家族は待合室で時間を潰すことになるのですが、何度か同じ顔に出会うと、お互いに会釈程度のことはするようになります。その回数が増えると、世間話をするような相手も見つかります。 六十代後半、あるいは七十代に差しかかっていたかもしれません。奥様の治療の付き添いだと言っていたその方と私はそれほど親しくなったわけではなく、ほとんど私が聞き役に回っていただけなのですが、「もっと丁寧に生きるべきだった」というようなことを漏らしていました。 たぶん、実際話していたのはもっと違う表現だったのですが、何度か私の頭でその場面が再生されるうちに、言葉がパラフレーズされて、あたかもそう