ベンサム Jeremy Bentham(1748-1832) 功利主義(Utilitarianism)を理論化したのは、ベンサムである。(その後、J.S.ミルやシジウックSidgwick によって更に発展した。) 『道徳と立法の諸原理序説』(1789)から、そのアウトラインを見ておこう。 Ⅰ)快楽主義( hedonism) ベンサムは、快楽主義の立場から出発する。快楽主義とは、「善=快」という立場だが、エピクロスの消極的な快楽主義と違って、大きければ大きい程よい、というのが近代の快楽主義である。ベンサムは言う。 「快楽を生む全てのものは、それが生む明白な快楽に比例して、善である。」 「自然は人類を、快楽と苦痛という、二つの主権者の支配下に置いた。われわれに何をするべきかを指示し、われわれが何をするかを決定するのは、ただこの二つだけである。」 従って、「快楽の増大と苦痛の減少」が、全ての道徳