構造改革という言葉は、小泉政権の生み出したキャッチフレーズだと思われているかもしれないが、もともとはイタリア共産党の指導者トリアッティが1940年代に提唱した、暴力革命によらないで議会で社会主義革命を行おうとする方針のことである。日本でも社会党の江田三郎などがこの路線をとったが、左派から「改良主義」と批判され、江田は党から追放された。 ことほど左様に構造改革というのは多義的な言葉であり、特に「リフレ派」を自称する人々は「構造問題は幻想だ」などと批判した。しかし著者のいう構造改革の意味は、それほど曖昧ではない。1990年代末には、数十兆円の財政出動によって日本の財政赤字が世界最悪になったにもかかわらず、経済は回復しなかった。それに対して、マクロ政策に頼らないで産業構造の改革で生産性(潜在成長率)を高めることが大事だ、と著者が総裁候補だった小泉氏に説いたことが始まりである。 だから構造改革