◎「14歳の国」(宮沢章夫著 白水社 1998年) 田辺剛 わたしが初めて自分で戯曲を書き、劇作家として活動を始めようとした頃、どうやって書けばいいのかも分からず見よう見まねでやるほかないと、やる気だけは十分な時に出会った『14歳の国』だ。戯曲の一部を試演しているのを観て興味をもち、本屋を探したのを覚えている。装丁の写真やデザインも印象的だった。 この本は本編だけではなく、まえがきやあとがきに加えて「上演の手引き」という文章もあり、いま読み返してみると、単に一本の戯曲というよりも、本全体として著者の演劇論になっているのだと気が付く。そうしたこともあって駆け出しの頃のわたしには特に刺激に満ちていたのだろう。戯曲や演劇への手がかりのようなものをわたしはこの本から得たのだった。 『14歳の国』は、1998年に上演された戯曲だ。中学校の教室を舞台に体育の授業中で生徒が不在であるところに教師たちがや