「昼夜を問わず研究開発に没頭できる人材はいないか」。台湾積体電路製造(TSMC)の幹部は2024年8月下旬、日本のある国立大学の大学院教授にこう尋ねたという。 具体像を確認しようとする教授に、TSMC幹部ははっきり答えた。「日本人は想定より働かないが、博士号を取得できる学生なら違うはずだ。積極的に受け入れるルートを広く築きたい」 ■本連載のラインアップ予定 ・TSMC、博士獲得へ全国行脚 「昼夜問わず仕事できる人材」(今回) ・博士の卵も囲い込むアマゾン キリンHDやJR西、争奪戦で挽回に動く ・ポケモン、博士手当100万円 専門性だけでない「ゼロイチ」の力 ・富士通、博士課程進学と同時に雇用 研究しながら働く二刀流人材に ・三井住友信託銀行、異色の理系バンカー部隊発足 博士の目利き力に着目 ・北大博士学生、ゴルフ場の集客を分析 育成へ大学も変わる ・筑波大博士、学生と企業がオンラインサロ
この記事の3つのポイント 憲法が保障する人権について「宇宙の戦士」から考える 貢献度と発言力がリンクする考え方はとても危うい 極論への痛快な一撃「プライベート・ベンジャミン」 本コラムは時折担当の編集Y氏から「お題」を振られるのだけれど、今回は「連休の谷間に掲載なので、5月3日、憲法記念日ということで一つ」という指令が届いた。 実は、最近「人権」ということを考え続けている。というのも、ここ10年以上にわたって政権の側に属する政治家からあまりに人権をないがしろにする発言が続いているのを、いったいどう考えたものか、と思っているからだ。 試しにネットで「人権侵害 政治家」とニュースを検索してみよう。すると、出てくる出てくる、あの自由民主党議員の人権侵害発言のニュース……正直、彼女がなにを考えてあのような発言をしているのか、私には分からない。 私はいい加減ロートルのSFマニアなので、人権というとす
悩み:昔は薄給に耐えたのに、年を取ったら若手厚遇…納得がいきません 上田さん、初めまして。私は現在59歳サラリーマンで、若く感じていた自分がいつの間にかこの年齢になっていました。今後の生き方や選択肢について相談したいと思っています。 最近、政府主導の企業改革や賃金上昇、人的資本への投資などの対策が進んでいますが、それにもかかわらず何かが足りないと感じます。若いころは薄給でしたが、「おまえもいつかは給料がぐんと上がる」と言われて、サービス残業や休日出勤も我慢してこなしてきました。そこそこの昇給はしましたが、50代以降の私はかつての先輩たちの境遇と比べるとはるかにレベルが低いです。 会社としては若い社員を厚遇し、新卒社員の初任給は毎年のようにどんどん上がります。まだ社会人になりたてで何もできない人に好条件を出す。一方、長く勤めてきた私に対して、心ない役員が「おまえは給料が高い」と言ってきました
代わりに大きくシェアを伸ばしたのが米グーグルだ。22年度通期での国内シェアはランキング圏外だったが、23年度上期には、不動の首位である米アップルに次いで2位に浮上。出荷台数は前年同期比で4倍超の144万台と大幅に増やした。アップルを含む他社が軒並み出荷台数を減らす中、グーグルの「一人勝ち」が鮮明となっている。 グーグルは端末の“投げ売り”とも言えるような積極的な販売戦略でシェアを伸ばしている。22年秋発売の「ピクセル7」は、古い端末の下取りや予約特典などを活用することで公式ストアからは実質ゼロ円で購入できた。直販であれば、総務省の値引き規制の網にもかからない。 さらに23年5月発売のピクセル7の廉価モデル「ピクセル7a」は、7と同じプロセッサを使って性能をほぼ据え置いた一方で、販売価格を1万円以上引き下げた。「端末の安売りに加え、巨額の広告費を投入してテレビCMも流し、日本でのシェアを一気
(決算特集での用語の使い方、全社共通の概況などは第1回を→「2023年3月期、自動車会社に吹いた追い風と逆風」) マツダは増収増益の決算発表を行った。印象としては、一連の新型コロナ禍に付随する諸問題をクリアして、ついに反転攻勢に入った形に見える。ただし、第6世代の車種が絶好調だった、2017年ごろの勢いにはまだ及ばない。 ベストイヤーの2016年3月期と比べてみると ということで基礎的なデータを見ていこう。 グローバル販売台数(カッコ内は対22年3月期、以下同):111万台(89%) 売上高:3兆8268億円(+7065億円) 営業利益:1420億円(+378億円) 営業利益率:3.7%(+0.4ポイント) 当期純利益:1428億円(+612億円) 数字を見る限り、前期(22年3月期)との比較では好調であり問題なく見える。あとは見る側がマツダの本来のポテンシャルをどこに置くかによる。 例え
だが米国以上にユニークなのが日本だ。アジアの多くの国と同じように日本のリーダーシップは階層主義的だ(図の右半分)。上下関係がはっきりしていて、部下が人前で上司に意見することはめったにない。リーダーシップが階層主義的な国の多くは、意思決定はトップダウン型になる(図右上)。迅速で柔軟、一度決まったことでもすぐに変更や修正がある。中国やインドがこうしたケースだ。一方、日本の意思決定は合意型だ(図右下)。組織のなかで合意を積み上げていく。意思決定に時間はかかるが、ブレずに迅速に実行される。 リーダーシップと意思決定という2つの指標で、日本ほど正反対の極へ大きく振れる国は他にない。階層主義と合意主義の共存という珍しいパターンが、他文化の人から見て日本の組織やリーダーは分かりにくいという印象を与え、摩擦を生む原因になる。同じようにヒエラルキーを重視するにもかかわらず、インド人は日本人リーダーが意思決定
米軍によるアフガニスタンへの報復攻撃が続く中、一般市民はどんな状況なのか。パキスタン北西部の都市ペシャワールを本拠地に、アフガン東部で18年間にわたり医療活動を続けている、非政府組織「ペシャワール会」の現地代表・中村哲医師に現地の様子やタリバン政権の実態について聞いた。中村医師は米ニューヨークのテロ事件直後にアフガン入り。10月13日現在一時帰国中だが、今月中に再度ペシャワール入りする予定である。 市民は北部同盟を受け入れない 今、アフガニスタンの市民は思ったより冷静です。首都カブールと北部のジャララバードにある会のオフィスから毎日2回連絡がくるので、日本にいても状況はつかめます。会はカブール市内に5カ所の診療所を運営していて毎朝8時に朝礼をしていますが、空爆の後も変わっていません。 日本の報道で一番伝わってこないのが、アフガンの人々の実情です。北部同盟の動きばかりが報道されて、西側が嫌う
この分野の研究は、日米中韓、欧州連合(EU)、インド、ロシアの7国・地域が共同で進める国際熱核融合実験炉(ITER)が約20年前に着手した。しかし、国家間の調整が進まないことからプロジェクトの進捗が遅れている。こうした現状を横目に、盛んになっているのが民間企業の動きだ。ここ数年で欧米中心に40~50社の関連企業が生まれている。 「核融合発電に必要な機器を作ってくれないか」。欧米の核融合炉関連企業からそうした引き合いがくるのが、2019年10月に設立した京都大学発のベンチャー、京都フュージョニアリング(京都府宇治市)だ。核融合炉は、プラズマの中で核融合反応を起こす過程と、そこで発生する熱を取り出す過程から成る。京都フュージョニアは後者で利用する機器に不可欠な独自技術を持ち、共同創業者の小西哲之・京大エネルギー理工学研究所教授の研究成果がベースになっている。
香港立法会の民主派議員4人の議員資格が剥奪された。その法的根拠に対して法曹界からも批判の声が上がっている。果たしてどのような法的根拠で今回の決定は行われたのか。また、それは香港の「法の支配」をどのように破壊するのだろうか。 11月11日、香港政府は香港の国会に当たる立法会の民主派議員4人の資格を剥奪した。中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会で国家の安全に危害を加えたり、香港事務への外国勢力の介入を招いたりする者は直ちに立法会議員としての資格を失うと決定したことを根拠としている。 本来、立法会の選挙は2020年9月に行われるはずだった。香港政府の審査により現職4人を含む12人が、同選挙における立候補資格を剥奪されている。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により香港政府が選挙の1年の延期を決定した。 その際、全人代常務委員会は全ての議員の任期を1年延長すると決定したが、延期
吉報は最後まで届かなかった。 福岡・大分両県の境に人口2000人の村、東峰村がある。この村を走り、少なからず住民の生活を支えてきたJR日田彦山線が豪雨災害で不通となってから3年余り。今年5月に出た結論は「鉄道での復旧を断念し、線路跡はバス専用道にする」──。1000日以上、列車を迎え入れることも出発を見送ることもできない筑前岩屋駅のホームは、すっかり草がむし、枕木も目を凝らさねば見えない状況になっている。 東峰村の渋谷博昭村長は顔を曇らせる。「日田彦山線は村に住む高校生にとって重要な通学の足になってきた。鉄道を使って、福岡県久留米市や隣接する大分県日田市などに通う学生が多かった。バスへの転換が決まったことで、人口減少に一層、歯止めがかからなくなるかもしれない」 九州の田舎で起きた特別な事例か 果たしてこの事例は、九州の田舎の特別な例だと言い切れるだろうか。 「線路をどこまで、いつまで続ける
今回は、「桜を見る会」の話をするつもりでいる。 このあまりにもベタで生煮えな話題を、あえていま騒動の渦中にあるタイミングでまな板に載せることにした理由は、私自身が「桜を見る会」まわりの問題を重視しているからというよりは、いまのうちに取り上げておかないと、来週の今頃にはすっかり風化しているだろうと考えたからだ。 桜は満開から3日後には早くも散り始める。この種の話題は、風化が早い。 そう判断したからこそ、官邸は中止の決断を急いだのだろう。 「なあに、さっさとテントを畳んで撤収すれば、じきにいつまでも跡地で騒いでいる連中の方が間抜けに見えるようになる」 という判断だ。 そして、その彼らの判断は、おそらく間違っていない。 メディアは3日で飽きるだろうし、野党が粘ったところで国民の関心はどうせ1週間ももたない。われわれは匙を投げるだろう。 「やめるって言ってるんだからもういいじゃないか」 と、そうい
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