「紀伊半島で新しい桜の野生種が発見される」という言葉が新聞や雑誌の見出しを賑せたのは2018年3月のこと。 このニュースを知って業界の有識者、庭木や桜に詳しい趣味家が驚き、悠久の浪漫に心を奪われました。 春になれば満開の桜の下で宴を開き、淡いピンク色を桜色と呼び、美しいピンク色のエビを桜エビ、貝を桜貝と呼ぶ。園芸植物においてもたくさんの種類があえて「さくら」という名前をつけられているほど、桜は日本人の心に深く根付いた植物です。 桜は昔から人の手によって幾度も育種交配が行われており、現在でも100種類以上が流通しています。 ところが、その野生種(昔から日本に自生していてその誕生に人の手が関わっていない桜)は、クマノザクラを除いてたったの9種。しかも、この9種類目の学名が発表されたのは今から100年以上も前のことです。 9種類目が発表されて以来、日本ではもう新しい野生種が発見されることはないと