一昨年に34歳で死去したSF作家、伊藤計劃(けいかく)さんの小説「ハーモニー」が、米国の「フィリップ・K・ディック賞」で、次点にあたる特別賞を受賞した。版元の早川書房によると、日本のSF小説が海外の著名な賞を受けるのは初めて、という。 有名な作家の名を冠したディック賞は約30年前に創設。米国でペーパーバックとして刊行されたSF小説の年間最優秀作を選ぶもので、これまで気鋭の意欲作が受賞している。 伊藤さんは2007年、「虐殺器官」でデビュー。20代でがんになり、2年に満たない作家生活は入退院を繰り返していた。「ハーモニー」は生前完成させた最後の長編小説だった。政府に代わり、「生府(せいふ)」が過度な健康管理社会を築く世界を描いている。 早川書房の塩澤快浩さんは「日本のみならず世界に通じる空気をすくい取っていた。コンパクトな分量にもかかわらず、テーマ性の高い作品は米国にも少ない」と話した