『私と東大』 東京大学の130周年記念に講演をする機会をもったこと、大変光栄に存ずる次第です。 私は昭和の戦争の中で育った世代です。日中戦争が始まった1937年の翌年(1938年)に京都の同志社中学に入学、それから真珠湾攻撃が始まる翌年(1942年)の4月に第三高等学校に入学、さらに敗戦の1年前(1944年)に東京帝国大学に入学しました。普通なら、三高の学生は京都大学に行くわけですが、私は「十数年住み慣れた京都を出たい」と思い立ち、東京帝国大学に参りました。戦争の中に置かれた人間は永遠の知識のようなものを求めたがるものです。高等学校時代、私は、ギリシアの自然哲学、物理学の世界観などに関心を持ちました。その当時、相対性原理などが現れ、物理学の分野では非常に革命的な発展が起こっていました。我々人類の自然観が変わったのですね。「20世紀は物理学の世紀だ」とさえ言われていました。それで、東京帝国大