レベル1.内容がわかる 論文を読むのは暗号の解読みたいだ、と大学生のとき私は思った。 あのころ私は、研究室の机に座って一日中、論文を読んでいた。 読んでいたというか、少し読む→知らない単語が出てくる→辞書で調べる、ということをくり返していた。 辞書に書いてあるのは日本語なのだけど、ときどきその日本語の意味さえわからないことがあった。 気が遠くなった。 そんなとき私はよく、古代文字を読む人になって気をまぎらわせた。 ラピュタのムスカ大佐みたいな感じだ。 これをぜんぶ解読したとき、きっと聖なる光が私を天空へ導くだろう。 大学院に入ってからも、論文を読むのは大変だった。 先生や先輩たちは休憩中にコーヒー飲みながら読んでたりしたけれど、私にとってはそんな優雅なものではなかった。 でもごくたまに、自分の研究によく似た論文があって、スラスラと読めることがあった。 専門用語や実験方法が知ってるものばかり