紙の単行本、文庫本、デジタルのスマホ、タブレット、電子ブックリーダー…かたちは変われど、ひとはいつだって本を読む。気になるあのひとはどんな本を読んでいる? 各界で活躍されている方たちが読みたてホヤホヤをそっと教えてくれるリレー書評。 隣の席のJ君は漢和辞典を引くのがとても速かった。目的の漢字を引くために、辞典の見返しの部首一覧から探すべきか、音訓索引から行くべきか、それとも「この字は823ページで見た気がする」と記憶を頼りに当たりをつけるか、そういう判断も速かったし、まためくるのも速かった。漢和辞典を引く速さを競う競技があったら優勝間違いなしなのに、とわたしはいつも彼のぼろぼろになった『漢語新辞典』を微笑ましい気持ちで眺めていた。 J君とわたしは漢文で切磋琢磨する仲だった(漢文を介さない接点はゼロだった)。J君が昼休みに「過去問にいい七言絶句が載っていましたよ」と破顔して参考書を持って来れ